適切業品(パッタカンマ品, Pattakammavaggo)とは、パーリ仏典増支部四集の第7品。パッタカンマ経(適業経, Pattakammasuttaṃ)、アナナ経(無負債経,Ānaṇyasuttaṃ)などが含まれる。
釈迦がアナータピンディカ居士に、在家信者はどのような生活を送ればよいかについて説く。世間における楽を提示し、それを獲得する4つの方法と、その障害になる五蓋を挙げている。それを獲得できたならば、その後にすべきことも指南している。
またインド哲学におけるカーマに触れ、無罪の楽が最高であるとしている。
パッタカンマ経
世間で得難い四つの行い
世間において誰もが期待するのだが、しかし得難い4つの行いについて述べている。
- 正当な方法(如法)で得た財産を所有できる楽(Sukha)
- 前者を満たしてうえで、親族や恩師とともに名誉を得る楽
- 前者を満たしたうえで、健康で長生きできる楽
- 前者を満たしたうえで、死後に天界に生まれる楽
期待をかなえる四つの方法
これら得難い四つの行いについて、いかに獲得するかを釈迦は説く。
- 信の具足 (saddhāsampadā) - 如来の覚りを信じること。
- 戒の具足 (sīlasampadā) - 五戒を守ること。
- 施の具足 (cāgasampadā) - 布施に応じること。
- 慧の具足 (paññāsampadā) - 五蓋に打ち負かされないようにすること。
慧の具足
慧の具足については、釈迦は「心の障害」として貪欲、瞋恚、惛沈、掉挙、疑の5つを挙げ(五蓋)、これらの汚れが心に入らないよう努めることであると説いている。
恵まれた人の四つの行い
これらの努力を経て、正当な方法で財産を得た在家者について、その後の生活について指南している。
- 受用の楽 - 正当な方法で財産を得た在家者について、その使い道を述べる
- 自分自身の面倒を見て楽しむ
- 両親に楽をさせて養う
- 妻子、使用人に楽をさせて養う
- 親友たち、仲間に楽をさせる
- 財産の確保の楽
- 財産がなくならないように、適切な対策を取るべきとしている
- 5つの義務を果たせる楽 - 社会の中における自分の義務を果たせる喜び
- 親族に対する義務
- 来客、旅人に対する義務。旅の修行者をもてなすなど。
- 先祖供養の義務
- 王(施政者)に対する義務
- 神々に対する供養の義務。土地の神々に対する供養など
- 布施ができる楽
アナナ経
- 正義の手段によって富を獲得する楽 (atthi-sukha)
- 富を家族、友人、功徳的行為に自由に使う楽 (bhoga-sukha)
- 債務から解放され、借りがない自由の楽 (anaṇa-sukha)
- 憎しみから解放され、思考、言葉、行為で誤りを犯すことなく、完璧で純粋な人生を送る楽 (anavajja-sukha)
脚注
参考文献
- パーリ仏典, 増支部四集 7.パッタカンマ経, Sri Lanka Tripitaka Project
- アルボムッレ・スマナサーラ『テーラワーダ仏教「自ら確かめる」ブッダの教え (スマナサーラ長老クラシックス)』2018年。ISBN 978-4804613574。
関連項目




